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20030617
飛び降り
「さようなら。私」
私はオフィス街のビルの屋上から飛び降りた。
昨日、服飾デザイン事務所をクビになった。初めから私に才能なんて無かった。
ここから飛び降りれば、全てが終わる。いや、終わるはずだった。
気づくと私はベッドで寝ていた。病院ではない慣れた風景だ。私の部屋だった。
体を起こしてみた。どこにも怪我はなかった。
今朝、ビルから飛び降りたのは夢だったのか。そんな考えが頭をよぎった。
けれど、今の私にとってそれはどうでも良いことで、また飛び降りれば済むことだ。
「さようなら。私」
前にも同じ事を言った気がした。
目を開けるとベッドの上だった。最初ほどの驚きは無かった。
それから私は何度も飛び降りた。ビルを変えたり、台詞を変えてみたりしたが、結果は同じだった。
もう飛び降りるのは諦めた。代わりに家に引きこもって、服を作った。好きな服を好きなように作っていると、ふと学生時代を思い出した。
時にはフリーマーケットで販売もした。私の作った服で喜んでくれる人が居る。嬉しかった。
そんなある日、大手企業から私をデザイナーとして雇いたい、という内容の電話がかかってきた。私の好きなように仕事をして良いという好条件を前に、断る理由は無かった。
私のデザインはあっと言う間に評判になり、何もかもが順調だった。
喜びの絶頂に居た私は、少し浮かれすぎていたのかもしれない。
仕事の合間の気分転換のために、会社の屋上に出た私は、そこで声を聞いた。
「さようなら。私」
体が宙に浮いた。ベッドには戻れなかった。
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